休みやすい薬局チェックリスト|子育て中の薬剤師が求人票・面接・見学で見る20項目
目次
「子育て支援あり」「アットホームな職場」。求人票にはそう書いてあっても、入ってみるまで本当に休みやすいかはわかりません。
この記事は、noteで書いてきた「休みやすい薬局」の記事5本を1つにまとめ直し、求人票・面接・見学でそのまま使えるチェックリストにした完全版です。
先に結論
休みやすさは、次の2つの掛け算で決まります。
| 中身 | 片方だけだと… | |
|---|---|---|
| 物理的な余白 | 人数、応援の仕組み、事務さんとの連携 | 理解があっても、人がいなければ休めない |
| 心理的な空気 | 休みを「お互いさま」と受け止める人がいるか | 人数に余裕があっても、相談しにくい |
そして、この2つは求人票だけではわかりません。数字と事実を聞いて、自分で確かめる必要があります。
この記事では、確かめるポイントを「数字」「仕組み」「人」の3つに分けて紹介します。最後に、印刷やスクショで使える20項目のチェックリストをつけました。
書いている人:調剤薬局で18年働いてきた薬剤師です。個人薬局から大手チェーン、調剤併設ドラッグストア、派遣まで、10の職場を経験しました。管理薬剤師やエリアラウンダーとして、シフトや人員のやりくりをする側にもいました。2児の父で、妻もパート薬剤師です。
1. 数字で見る|「1人休んだら、残る人の負担は何倍か」
40枚ルールは「最低限」の基準
薬局には、置かなければならない薬剤師の人数の基準があります。1日平均の処方箋枚数を40で割った数以上の薬剤師が必要、という決まりで、現場では「40枚ルール」と呼ばれています。眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は、1枚を3分の2枚として数えます。
大事なのは、これが「これより少ないと違反」という最低ラインだということです。満たしているからといって、休める余裕があるとは限りません。
実際、面接で「薬剤師1人あたり40枚付近はさばいてもらいます」とはっきり言われたこともあります。その会社は、給料の待遇が良い会社でした。給料が高い求人には、相応の業務量がついてくることがあります。
同じ「1人40枚」でも、人数が多いほど休みやすい
| 体制 | 1日の枚数 | 1人休んだら | 残る人の負担 |
|---|---|---|---|
| 2人体制 | 80枚 | 1人で80枚 | 2倍 |
| 3人体制 | 120枚 | 2人で120枚 | 1.5倍 |
| 5人体制 | 200枚 | 4人で200枚 | 1.25倍 |
どれも「1人あたり40枚」ですが、1人の休みが残る人にのしかかる重さはまったく違います。求人を比べるときは、1人抜けたら何倍になるかまで計算してみてください。
1人薬剤師の店舗は「1人で回せる人の数」で決まる
1人薬剤師の店舗が休みやすいかどうかは、そのお店を1人で回せる人が、自分以外に何人いるかで決まります。
耳鼻科の門前で、1日20〜30枚の1人薬剤師の店舗にいたときは、お店に慣れていない人が午前中を1人で回すのは難しく、休むときは慣れた応援を呼ぶか、2人の応援が必要でした。その後、パートさんが週3回午前に入ってくれるようになり、シフトは一気に安定しました。
子どもの発熱や行事で休む回数が多くなる子育て中は、原則として1人薬剤師の店舗は避けたほうが安心です。選ぶなら、応援の手配役と、1人で回せる応援の薬剤師が何人いるかを、必ず確かめましょう。
在宅のある薬局は「1人になる時間」に注意
在宅業務のある薬局は人員に余白があることが多い一方、訪問や配達で薬剤師が出かけている間、店舗に残る薬剤師が1人になる時間帯があります。自分がその時間帯を1人で担当するのかどうかは、必ず聞いておきたいポイントです。
2. 仕組みで見る|「休んだとき、誰が来てくれるか」
応援の仕組みは「当日の朝に動けるか」
「ラウンダー在籍」「応援体制あり」と書いてあっても、それだけでは休みやすさはわかりません。私がエリアラウンダーをしていた会社では、欠員が出た店舗に、予定を変えて入る運用になっていました。こういう会社は、子どもの急な発熱に強いです。
反対に、ラウンダーの予定が先々まで固定されている会社では、ラウンダーがいても当日の欠員には間に合いません。エリアマネージャーのような調整役がいない会社では、近くの店舗に自分で直接お願いするしかなく、都合がつかなければ休みを諦めることもありました。
事務さんがどこまで担っているか
同じ人数でも、事務さんがピッキング、電話対応、患者さんの対応をどこまで受け持っているかで、1人抜けたときの回りやすさは変わります。患者さんからの相談を「はい・いいえ」で答えられる形にまとめて薬剤師に持ってきてくれる事務さんがいるお店は、本当に強いです。
仕事のやり方が合理的か
1人あたりの枚数が少ないのに、いつもバタバタしている店舗もあります。手書きの薬歴や、「今までこうしてきたから」という独自ルールが多いお店では、枚数のわりに手間がかかり、余裕が生まれません。
異動の範囲
店舗に何人置くかは、実際にはエリアマネージャーなどの感覚で決まっていることが多く、同じ会社でも店舗ごとに休みやすさはまったく違います。
私自身、面接で「あるエリアを除けば、週に2回程度は休めます」と説明を受け、入社2〜3年後に、残業が月40〜50時間を超えるペースの店舗に配属されたことがあります。「例外」として軽く語られた部分こそ、詳しく聞いてください。
3. 人で見る|「休みを受け止める人がいるか」
「何人」より「誰が」子育てを経験しているか
子育てへの理解がある薬局に共通するのは、子育て中のスタッフの数ではなく、シフトを組む管理薬剤師や、店舗のキーになる人が子育てを経験しているかです。休んだ翌日に「お子さん、大丈夫だった?」と自分の体験をもとに声をかけてくれる人がいると、休んだあとの気持ちの楽さがまったく違います。
小さい子どものいる薬剤師は「1店舗に2人」が目安
「子育て中の人が多いほど、お互いさまで休みやすい」と思いがちですが、多すぎると逆効果です。病気の流行や行事は同じ時期に重なるので、休みがぶつかってしまいます。1店舗に2人で多いほう、3人以上いる店舗は避けたほうが安心です。
休みにくい店舗のサイン
エリアラウンダーとして応援に入ると、休みにくいお店はすぐにわかりました。
- お店の空気が重く、仕事が回る・回らない以前に、休みを言い出しにくい
- 誰かを攻撃するような口調の人がいて、休むと裏で何を言われるかわからない
こうしたサインは、店舗見学でも感じ取れることがあります。
求人票の言葉の読み替え表
| 求人票の言葉 | よくある本当の意味 | 確かめる質問 |
|---|---|---|
| アットホーム | 飲み会やイベントなど、仲間とのつながりを大切にする文化のことがある | 「仕事のあとの集まりやイベントは、どのくらいありますか?」 |
| 子育て支援あり | 制度はあっても、現場のカバーが追いついていないことがある | 「子育て中の方は、実際に制度を使っていますか? 休みのときは現場でどうカバーしていますか?」 |
| 子育て中のスタッフ多数 | 管理薬剤師に子育て経験がない、または小さい子どもの親が多すぎることも | 「管理薬剤師の方にもお子さんはいらっしゃいますか? 小さいお子さんのいる薬剤師は何名ですか?」 |
| ラウンダー在籍・応援体制あり | 応援が当日に動けるとは限らない | 「当日の朝に欠勤が出たとき、ラウンダーの方が予定を変えて入ることはありますか?」 |
| 週休2日(一部エリアを除く) | 除かれたエリアに、会社のいちばん厳しい現実があることも | 「除かれているエリアは、どんな状況ですか? 異動の範囲はどこまでですか?」 |
面接・見学で聞く質問集
印象ではなく、事実を聞くのがコツです。「忙しいですか?」と聞くと相手の感想しか返ってきませんが、数字を聞けば自分で判断できます。
| 確かめたいこと | 聞き方の例 |
|---|---|
| お店のタイトさ | 「処方箋は1日に何枚くらいですか? 薬剤師と事務の方は、普段何名ずつ出勤されていますか?」 |
| 在宅の負担 | 「在宅で訪問している施設や患者さんは何人くらいですか? 外出中、店舗には何名残りますか?」 |
| 帰れる時間 | 「先生は平均でどのくらいの時間まで診察されていますか? お店は何時ぐらいまで対応されていますか?」 |
| 急な休みの対応 | 「子どもの急な発熱で休むとき、応援はどなたが手配してくださいますか?」 |
| 休みが続くとき | 「子どもの病気で休みが続いたとき、どのようにフォローしていただける体制ですか?」 |
| 自分の立ち位置 | 「私がいないときは、どなたが1人で回されていますか?」 |
「何時に帰れますか?」とストレートに聞くと、働く意欲が低いと受け取られることがあります。上のようにお店の事実を聞く形に言い換えると、印象を損なわずに確かめられます。
見学は、あえて一番混む時間に。 外来が混む11時から12時ごろに見学をお願いしてみてください。その時間帯にスタッフ同士が軽く話せるくらいの余裕があれば、自分が休んでも回る可能性が高いです。
立場によって、休みやすさは逆になる
同じお店でも、立場が変われば休みやすさは変わります。
- 1人で回せる店舗の「2人目のパート」 → 自分が休んでも、もう1人が回せるので休みやすい
- 応援体制のある会社の、店舗の社員・パート → 応援の恩恵を受けて休みやすい
- ラウンダーやエリア薬剤師 → 休みの穴を埋める側になり、休みにくいことがある(私自身、ラウンダー時代の休みは月6〜7回でした)
求人を見るときは、お店の条件だけでなく、自分がそこでどの役割を任されるかも考えてみてください。
条件の優先順位を先に決める
妻がパート薬剤師として職場を探したとき、一番の条件は「当日休んでも業務が回ること」「急な欠勤のリスクを理解してくれること」でした。通勤時間の条件もあってなかなか見つからず、夫婦で話し合って「時給が一定以上あれば、休みへの理解を優先する」と決めました。
最終的に選んだのは、薬剤師である代表自身が予備の人員として現場に入れる薬局でした。
すべてを満たす職場はなかなかありません。何を一番優先し、何なら譲れるかを先に決めておくと、求人選びも、転職サイトの担当者とのやりとりもスムーズになります。
休みやすい薬局チェックリスト(20項目)
求人票・面接・見学のときに、スマホで見ながら使ってください。
数字
- 1日の処方箋枚数を聞いた
- 薬剤師と事務さんの出勤人数を聞いた
- 1人休んだとき、残る人の負担が何倍になるか計算した
- 門前の診療科と、閉局の実際の時間を確認した
- 在宅の件数と、外出中に店舗に残る人数を確認した
仕組み
- 急な休みのとき、応援を手配する人が決まっている
- 応援の人が、当日の朝に予定を変えて来られる
- そのお店を1人で回せる人が、自分以外にいる
- 事務さんがピッキングや電話対応を担っている
- 電子薬歴など、仕事のやり方が合理的
- 異動の範囲と、子育て中の事情への配慮を確認した
- 「例外」として語られた部分を詳しく聞いた
人
- 管理薬剤師やキーになる人に、子育ての経験がある
- 小さい子どものいる薬剤師が、自分を入れて2人まで
- 子育て中の人が、実際に制度を使っている
- 見学のとき、お店の空気が重くなかった
- きつい口調で人を責める人がいなかった
自分
- 一番優先する条件と、譲れる条件を決めた
- 自分がその店舗でどの役割(コア・2人目など)になるか想像した
- 混む時間帯(11〜12時ごろ)に見学した
よくある質問
Q. 大手チェーンなら休みやすいですか? A. 応援の仕組みがある会社も多い一方で、配属先によって忙しさが大きく違います。異動の範囲と、店舗ごとの差を必ず確認しましょう。
Q. 給料が高い求人は避けたほうがいいですか? A. 避ける必要はありませんが、1人あたりの業務量が多いことがあります。給料と、1人あたりの枚数をセットで見てください。パートの年収の目安は、パート薬剤師の年収かんたん計算でも確かめられます。
Q. 踏み込んだ質問をすると、採用に響きませんか? A. どうしてもその会社に入りたい事情があるなら、聞き方は工夫しましょう。ただ、合う職場を探している段階なら、ここで紹介した質問は使って大丈夫です。入ってからのミスマッチに比べれば、面接でお互いの方向性を確かめるほうがずっと大切です。
Q. 自分で判断がつかないときは? A. 処方箋枚数が同じでも、診療科によって忙しさは大きく変わります。転職サイトを使っているなら、担当者に「この枚数と人数、この診療科だと忙しいほうですか?」と相場感を聞いてみてください。
まとめ
- 休みやすさは「物理的な余白」と「心理的な空気」の掛け算。どちらか片方では足りない
- 数字(1人休んだら何倍か)、仕組み(当日の応援・事務さん・異動)、人(誰が子育てを経験しているか)の3つで確かめる
- 求人票の言葉は、事実を聞く質問に言い換えて確かめる。「例外」として語られた部分こそ詳しく聞く
完璧な職場はなかなかありません。それでも、何を確かめればいいかがわかっていれば、「入ってみたら違った」を減らすことはできます。あなたと家族が安心して働ける職場に出会えますように。
出典
- 薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(第1条第1項第2号:薬剤師の員数の基準)e-Gov法令検索
- 制度は変わることがあります。最新の内容は、厚生労働省やお住まいの地域の保健所などでご確認ください。
noteでも、テーマごとにくわしく書いています 1人薬剤師の店舗、40枚ルール、ラウンダーと応援体制、子育て中のスタッフが多い薬局の話は、noteのママ薬剤師向けアカウントで1本ずつ読めます。
さいとう|薬剤師歴18年目・二児のパパ。プロフィール